◎巨大な手と橋に人が集まるワケ―決め手は神秘性とエンタメ性=ベトナム探訪記

8月は次回作の執筆と出張、その他(頼まれ原稿複数)で忙殺され、桑鳩堂の更新が間に合わず。ようやく、8月が終わり、余裕が出てきたので、通常モードに切り替えていく。

 8月は北海道、ベトナム、奈良、大阪を訪問した。本コラムでは、観光で感じたことをまとめる。

◎巨大な手と橋に人が集まるワケ―決め手は神秘性とエンタメ性=ベトナム探訪記

 8月は次回作の執筆と出張、その他(頼まれ原稿複数)で忙殺され、桑鳩堂の更新が間に合わず。ようやく、8月が終わり、余裕が出てきたので、通常モードに切り替えていく。

 8月は北海道、ベトナム、奈良、大阪を訪問した。本コラムでは、観光で感じたことをまとめる。

▽ベトナム、圧倒的交通事情

 初めてのベトナムの旅は5日間、ハノイ、ダナンに滞在した。

 ベトナムの物価は日本の3分の1程度の感覚だった。暑いことを覚悟すれば、費用面では旅しやすい国である。料理はパクチーを除けば、日本人にもなじみやすいあっさりとしたものが多かった。

 空港の入国審査は時間を要する。いわゆる有料の「ファスト・パス」を試しに利用したが、預け荷物が出てくるのが遅く、せっかく入国審査を「ファスト・パス」したのだが、なかなか空港を出られないのが悩ましいところだった。もっとも、飛行機を降りて30分程で荷物が出てくる日本の極めて効率化されたオペレーションとは比較してはいけないのかもしれない。

 ベトナムの経済成長率は8%台。平均年齢30代前半と「勢いのある国」とは理解していたが、予想を超えるスクーターの数の多さ、そしてクラクションを鳴らしまくるドライバーたちの運転に圧倒された。なにせ、人が多いのである。聞けば、50cc以下のスクーターは免許不要なのだという。雨の日は、レインコートを被ってのスクーター、バイク通勤ラッシュが繰り広げられるのだ。

▽疑心暗鬼がもたらす安全か

 歩行者信号はあまり設置されていない。さらに驚かされたのは、凄まじい数で往来するバイクと車の通る道を平然とした様子で渡っていくベトナム人であった。これが日本人には一番のカルチャーショックとなるかもしれない。

 現地の人に聞くと、「道を渡る時は走ってはいけない」という。急に走り出す歩行者の不規則動作はバイクの運転手を困惑させ、かえって衝突事故を招きやすくなるからだ。

 滞在中、不思議と事故を目撃しなかった。無秩序に見えて秩序があるのか。あるいは、「いつ誰かが渡るかもしれない」という疑心暗鬼が、「危険なスピード走行」と「注意散漫な運転」を抑制しているのかもしれない。

 脱線するが、かつて熊本支局に赴任していた時、台風で停電になり、道路の信号がすべて消えてしまう非日常体験をした。

 すると、ドライバー同士はアイコンタクトと手で譲り合うジェスチャーが始まり、さらに歩行者、自転車が道路に突っ込んできていないか普段以上に注意深くなった。

 信号には、人と人が労わり合い、トラブルを回避できるはずの人間性を失わせている面もある。

 つまり、「青信号」であるこちらに通行の優先権があり、「赤」である相手が止まらねばならないというルールが、ともすれば「相手は『赤』だから侵入してくるはずがない」という思い込みと過信につながり、事故を起こしてしまっているのではないか。

 スケジュールと暑さ耐性次第では、移動手段はタクシーが利便性良い。東南アジアナンバー1の配車アプリ「Grab」は、料金も確定済みで、安心で使いやすく、観光客にも浸透している。

▽「TEAM長友」

 ハノイでハロン湾日帰りツアーに参加するのであれば、日本語ガイドのティエンさんを探してみることをお勧めする。

 サッカー日本代表の長友佑都選手に似ていることから「ベトナムの長友」と称するティエンさん。ハロン湾に向かう道中のバスで、iPadを駆使して繰り広げるトークショーは、単なるガイドを超えてエンターテイメントの域に達するパフォーマンスだった。

 笑い話だけでなく、ベトナムの歴史や文化を織り交ぜながら、分かりやすく解説してくれる。日本についてもアニメから演歌まで語るティエンさんの守備範囲の広さと、文化への深い造詣には舌を巻いた。

 ツアー参加者は「TEAM長友」と表記されたカードホルダーを首から下げ、参加者同士の一体感も生まれる。ツアーの各所も見どころだが、復路のバスまで続く「長友」のパフォーマンスは、帰国しても余韻が残る程のインパクトを残した。

▽巨大な手と橋

 ダナンのバナヒルズは市内から車で25キロほど西へ走った山頂にある。フランス統治時代の避暑地だったという。

 ロープウェーで20分ほど昇った山頂は、夏場でも気温20℃前半と快適だ。観光客のお目当ては、神の手が橋を支えているように見える「ゴールデン・ブリッジ」である。眼下に広がる雄大な景色と相まって「SNS映え」する。

 海外からの観光客は引きも切らない。結婚するカップルが記念写真を撮影に来るなど、早朝に行かないと人波でごった返す人気スポットだ。

 特に歴史的な史跡や景勝地でもなかったにもかかわらず、なぜこれほどの人が「山頂」にやってくるのか。

 それは巨大な手と橋が、ひとえにスピリチュアル(神秘的)で、パワースポットとなっているからだ。

 もう一つの観光スポットが、ダナン中心部、ハン川にかかるドラゴンブリッジだ。金色のドラゴンを模した巨大なモニュメントが橋につくられている。観光客が目当てでやってくるのは、金土日の夜9時のショーである。ドラゴンが口から火を噴き、水を吐くのだ。

 この前後、橋は通行止めとなる。道路まであふれた外国人観光客は、ずぶ濡れになってはしゃぐのである。観光客目当ての露店やスクーターも集まり、大混雑が繰り広げられている。

 取り立てて、逸話やストーリーがあるわけではない。こちらもドラゴンという神秘性とSNS映えするショーがあるだけだ。

 ただ、このことは「何もない」と思われる日本の各地でも「打ち手」があるということを物語っている。さしたる歴史がなくとも、さほどのお金をかけずとも、凝ったストーリー性がなくとも、神秘性を感じられる造形や光景、驚きと歓喜のエンターテイメント性があれば、人は集まるのだ。

著者について

編集長:橋本卓典

1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。2009年から2年間、広島支局にも勤務。2020年編集委員。2025年8月から経済ジャーナリストとして独立。2016年5月に「捨てられる銀行」(講談社現代新書)を上梓、累計35万部のベストセラーになる。NIKKEI FINANCIALにも寄稿。まぐまぐメルマガ「橋本卓典の『現場をゆく』経済・金融ジャーナル」連載中。ラジオNIKKEI「記事にできない金融ウラ話~橋本卓典が語ります」でパーソナリティも務める。地域の変革、生産性向上に向けた活動を支援、協業くださるスポンサーも募集。takunori.hashimoto@sokyudo.com

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1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。2009年から2年間、広島支局にも勤務。2020年編集委員。2025年8月から経済ジャーナリストとして独立。2016年5月に「捨てられる銀行」(講談社現代新書)を上梓、累計35万部のベストセラーになる。NIKKEI FINANCIALにも寄稿。まぐまぐメルマガ「橋本卓典の『現場をゆく』経済・金融ジャーナル」連載中。ラジオNIKKEI「記事にできない金融ウラ話~橋本卓典が語ります」でパーソナリティも務める。地域の変革、生産性向上に向けた活動を支援、協業くださるスポンサーも募集。takunori.hashimoto@sokyudo.com

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