経営戦略・金融行政
経営計画、規制対応、収益多様化など
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事業性融資の結実ともいえる企業価値担保権の誕生と魅力
地域金融の課題
企業価値担保権を定めた事業性融資推進法は、不動産担保と個人保証に依存したこれまでの融資慣行を是正するよう求めている。 企業価値担保権は、不動産や動産のみならず将来キャッシュ・フローなどを含むすべての資産をまとめて担保に設定することができるようになる。設定する金融機関にはメイン行としての覚悟が求められる。 コベナンツを上手に活用することで効果的なモニタリング機能の発揮が期待され、金融機関と事業者の「情報の非対称性」が大きく軽減されることが予想される。そのため、与信・予兆管理の質が飛躍的に改善され、より効果的な事業者支援が実現できる。 加えて、将来キャッシュ・フローを含む全資産が担保となることから、(担保権者としての)金融機関が事業者を伴走して企業価値を向上させることになる。企業価値担保権という仕組みを利用して事業者支援をおこなうことで、金融機関にとっても事業成長がより自分事になる。事業者の利益と金融機関の利益が完全に一致する「共通価値創造のための担保」だ。 事業者を「生かすための担保」とも言い換えられる。
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◎企業価値担保権までの軌跡(企業価値担保権①)
企業価値担保権
企業が生み出す有形・無形資産の全てを担保(全資産担保)とみなす企業価値担保権が2026年5月25日から導入される。貸出先であるにもかかわらず地域金融機関が企業の事業性を見ようとせず、事業とは切り離された不動産担保・保証に依存してきたことが、これまでの中小企業金融であった。企業価値担保権時代が到来すると、企業の将来キャッシュフロー(すなわち事業性)を見極める力、さらには損益を改善させる企業支援力が金融機関に問われる。中小企業金融は変われるのか。初回は、どうして企業価値担保権が生まれるに至ったのか、すなわち地域金融の融資慣行を論じる。
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◎金融検査マニュアルとは何だったのか=中小企業金融を変えた「劇薬」
地域金融の課題
金融検査マニュアルは、1999年に導入され、2019年に廃止されるまでの20年間、日本の金融界、特に地域金融機関と中小企業の在り方を根底から変えた規制の枠組みだ。バブル経済崩壊後の深刻な不良債権問題を解決するために導入されたこの「劇薬」は 、金融機関の財務健全化に貢献した一方、担保と保証に過度に依存し、「企業の事業性を評価しない」という今日の銀行文化を形成する大きな要因となった。金融検査マニュアルはなぜ生まれたのか、その仕組み、運用実態、そして中小企業金融に与えた影響について詳述する。
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◎「地域金融力」はなぜ強化されてこなかったのか ②
人事・人材・福利厚生
前回コラム①では、金融庁が「不良債権処理官庁」として誕生した出自のため、地域金融行政について、人的配置・政策も含めて十分なリソースが割かれてこなかったことを述べた。加えて、2014年に森信親氏(当時監督局長、15年に長官)が打ち出した「事業性評価」という人口減少時代を見据えた政策でさえ、不良債権処理を目的として考案されたリレーションシップ・バンキングと同列視され、結果、森金融庁が狙った顧客企業と金融機関双方の利益に資する「共通価値の創造」には必ずしもつながらなかった歴史的経緯を述べた。今回は、別の角度から「『地域金融力』はなぜ強化されてこなかったのか」を考えたい。