◎外国人留学生「週28時間就労」をどう管理するのか=森興産・森社長に聞く⑧
外国人留学生に義務づけられているのが「週28時間」の就労ルールだ。
だが、この制度は難解であり、現場の管理が十分かどうかは疑問だ。逸脱すれば、外国人留学生の国外退去だけでなく、雇用側の法的リスク、学校側の管理指導責任が問われ、ペナルティが科されるかもしれない。
週28時間ルールが、なぜ難しい制度なのか、どう対処すべきなのかを森興産・森隼人社長に聞いた。
- 2026年5月11日
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◎外国人留学生「週28時間就労」をどう管理するのか=森興産・森社長に聞く⑧
外国人留学生に義務づけられているのが「週28時間」の就労ルールだ。
だが、この制度は難解であり、現場の管理が十分かどうかは疑問だ。逸脱すれば、外国人留学生の国外退去だけでなく、雇用側の法的リスク、学校側の管理指導責任が問われ、ペナルティが科されるかもしれない。
週28時間ルールが、なぜ難しい制度なのか、どう対処すべきなのかを森興産・森隼人社長に聞いた。
▽留学生の就労はあくまで「例外」
留学生の週28時間ルールは、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」で定められている。
在留資格が「留学」である外国人には、資格外の就労が原則禁止となっている。資格外活動の許可を得ることで、「留学」という主目的に支障をきたさない範囲で例外的に働くことが認められているのだ。
違反した学生は、「資格外活動許可違反」となり、ビザの更新が不許可となり、卒業後に日本企業へ就職できる「就労ビザ」への変更も認められなくなる。悪質な場合は、強制送還の対象にもなりうる。
▽週28時間という計算の難解さ
ところが、この「週28時間」という計算が容易ではない。
規定では「一週について二十八時間以内」と書かれている(入管法施行規則第19条第5項第1号)が、これは、「どの曜日から数えても(輪切り計算しても)連続する7日間で28時間以内」としなければならない、ということなのだ。
例えば、週末(金土日)に固めて8時間ずつアルバイトをしている学生がいるとする。この段階では24時間のため問題はない。しかし、翌月曜日が祝日である場合、連休対応のため別途8時間のシフトを入ることは大いにありえる話だが、「どの曜日から数えても」となると28時間を超えてしまうことをお分かりいただけるだろう。
また、A社でアルバイトをする学生が別のバイト先Bでも働いている場合も要注意だ。28時間計算はたとえ勤務先が違ったとしても労働時間を合算しなくてはならない。
▽企業側の責任も
だが、バイト先が別の掛け持ちバイト先の就労時間を正確に把握しているだろうか。
入管法第73条の2第1項は、不法就労させた者への罰則を定めているが、近年の法改正によって5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金と厳罰化されている。また第2項では、外国人の不法就労活動を知らなかったことを理由に処罰を免れることはできず、「過失がなかったことの証明」(知るための十分な確認努力)を自ら行わねばならないのだ。
中小企業で、どこまでこうした管理に力を入れているだろうか。手計算はおろか、一般的な勤怠管理システムでもカバーできないだろう。
現状、留学生本人の自己申告で判断するしかない。留学生に勘違いや計算ミス、虚偽申告があれば、企業側がそれを見抜くのは困難だ。
これでは、コンプライアンスを重視する企業ほど、「怖くて外国人を採用できない」となるかもしれない。
森社長も「多くの事業者で管理しきれていないことが社会問題」と警鐘を鳴らす。
▽学校のリスク
留学生の就労管理ができていない学校にもリスクがある。
アルバイトが忙しく留学生の出席率が80%を割ったり、法律違反を犯すと、学校は入国管理局から「適正校」の認定を取り消されかねないのだ。
適正校には、留学生の新規入国時やビザ更新時の提出書類が大幅に免除されている。
だが、認定を取り消され、「非適正校(慎重審査対象校)」に降格すると、留学生の資金状況を証明する通帳のコピーや親の収入証明、学校側の管理体制を示す書類など、膨大な書類提出が義務づけられる。
また、入管からの審査が厳格化され、結果、新規ビザの交付率低下や短期間だけの許可などの影響が生じ、事実上、留学生の新規受け入れが困難となることも予想される。悪質な場合は、刑事事件に発展し、留学生を受け入れられる「告示校」のリストからも除外され、留学生の受け入れ自体ができなくなる。
こうした留学生からの学費収入に依存している日本語学校などは、経営難に陥るリスクもあるのだ。
森社長によれば、現状、事後的に留学生からタイムカードの提出や自己申告で計算させていることも多いという。つまり、留学生任せなのだ。
▽アプリ連携で就労を可視化
どのように週28時間問題を解決すべきか。
森社長は、「留学生本人と企業、学校が連携しながら管理していくべきだ」と指摘する。
森興産として開発・提供しているのが、産学連携で「週28時間問題」を管理するアプリだ。
留学生向けモバイルアプリ「28-Twenty Eight-」(トゥエンティエイト)では、学生が計算できない就労時間の複雑な「輪切り計算」をアプリが自動で行う。そして「今日、何時間働けるか」を可視化するのだ。
企業向けウェブアプリ「28-Work Admin-」では、学生向けアプリと連動させることで、自社以外での就労時間も含めた全体の労働時間を管理し、シフト作成時やその後実際の勤務時間と照らしても28時間を超過しない(できない)設計になっている。
在留カード内の情報読み取りによる在留期限チェック、また、法務省が提供するシステムと自動連動させることで在留資格自体が本日時点で失効していないかどうかも判定でき、企業側が「法を順守し、正しく確認した」というエビデンス(無過失の証明)を残すことができるという。
学校向けウェブアプリ「28-Edu Admin-」も学生のアプリと連動させることで、学校側が留学生の就労状況をリアルタイムでモニタリングできる。アルバイト時間が多くなりつつある学生に対して事前に指導することも可能だ。
▽「ルールを守る」を信用スコアに
森興産が目指しているのは、単なる勤怠管理システムではない。
外国人留学生の就労という複雑なルールをシステムで自動的に管理できるようにすることで、「正しくルールを守り、働いた」というデータを可視化することにある。そのデータの積み重ねは、外国人としての「信用スコア」につながっていくからだ。
森興産は2024年3月、留学生の信用力を補完し、日本での留学、生活、就労を支援することを目的として、留学生に対する信用スコアリングビジネスモデルの特許を取得した。この特許の一部を実装したアプリが「28」なのだ。
▽活動実績を複眼的に捉える
留学生の信用力をどう評価するのか。森社長は、「活動実績を複眼的に捉えていくことで、立体的に評価できる」と話す。
たとえば、学校は、留学生の学業成績、出欠記録、教師の評価、表彰、学費の支払い状況を把握している。
企業では、インターンシップやアルバイトでの業務成績、勤怠記録、役職・役割や勤務先、取引先からの評価が分かる。
金融機関では水道光熱費、電気通信事業者への料金支払い、借入金・クレジットカード、奨学金などの支払い・返済、学費・生活費の状況のデータを持っている。
行政機関は、各種届出、社会保険への加入、法令遵守の状況などを把握している。
さらに、その他の団体では、取得した資格数、資格難易度、日本への関心度、言語能力、理解度、留学経費、ボランティア活動への参加、各種受賞歴が分かる。
こうした複数機関にまたがる活動実績情報を取得し、信用スコアを算出する。
継続性、まめさ(忠実性)、思いやり、柔軟性、コミュニケーション能力、課題解決能力などの性質をスコアとして算出することもできるという。
▽信用スコアに応じ優待サービス
森興産は、算出した信用スコアに基づいて、留学生の暮らしの利便性が向上する優待サービスを適用できると考えている。
金融機関では、口座開設、クレジットカードの発行、必要資金の融資だ。不動産業者では、住宅の賃貸契約、携帯電話会社では、スマートフォンの利用契約などがある。
たとえば、スマートフォンの契約には、銀行口座やクレジットカードが必要だ。反対に、銀行口座、クレジットカードをつくるには、連絡可能な携帯電話番号が必要となる。いずれも留学生には高いハードルだ。キャッシュレス化が進むと、クレジットカードを持てない留学生はますます不便になる。
留学生の信用力を可視化できれば、留学生の暮らしにくさを解消しつつ、社会全体で安心して留学生を受け入れることができる。
留学生を取り巻く「分からない」を「分かる」にしていくことが、安心で適正・適法に外国人材が活躍できる社会形成につながる一歩となるはずだ。