◎外国人対策、「ソフト面」の整備急げ=骨太方針を読み解く・森興産⑪
高市政権は7月21日、「骨太方針2026」(経済財政運営と改革の基本方針2026)を閣議決定した。骨太方針では、外国人政策の強化として、「出入国在留管理の一層の適正化」「各種制度の適正な運用等」「国土の適切な利用及び管理」が打ち出された。
不法行為を取り締まる法規制という「ハード面」の対策と同時に、規範や慣習、社会通念、地域のルールを守る「ソフト面」の整備も進めなければ、外国人との共生は難しい。
これまでの外国人政策の文脈をどう理解すべきか。現場レベルではどのような対策が必要になるのか。森興産の森隼人社長に聞いた。
- 2026年7月27日
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◎外国人対策、「ソフト面」の整備急げ=骨太方針を読み解く・森興産⑪
高市政権は7月21日、「骨太方針2026」(経済財政運営と改革の基本方針2026)を閣議決定した。骨太方針では、外国人政策の強化として、「出入国在留管理の一層の適正化」「各種制度の適正な運用等」「国土の適切な利用及び管理」が打ち出された。
不法行為を取り締まる法規制という「ハード面」の対策と同時に、規範や慣習、社会通念、地域のルールを守る「ソフト面」の整備も進めなければ、外国人との共生は難しい。
これまでの外国人政策の文脈をどう理解すべきか。現場レベルではどのような対策が必要になるのか。森興産の森隼人社長に聞いた。
▽不法滞在ピーク時の4分の1
骨太方針は、「電子渡航認証制度(JESTA)の導入」、「不法滞在者ゼロプランの強力な推進」などを打ち出し、外国人対策を強化する姿勢を鮮明にした。
森社長は「不法滞在者(不法残留者)は1992年の29万8646人をピークに全体としては減少してきた経緯があります」と話す。出入国在留管理庁によれば、2026年1月1日時点の不法残留者は6万8488人とピーク時の4分の1となっている。ただし、近年は下げ止まり、微増傾向にある。
▽オーバーステイが主因
そもそも、なぜ不法滞在が生じるのか。
「不法滞在の主要な要因はオーバーステイです。入国時は在留資格があったが、在留期間が過ぎているにもかかわらず、日本に居続けてしまうケースです」と森氏は話す。
たとえば、就労、留学、技能実習・特定技能のビザ(在留資格)以外にも、旅行などの短期滞在も入国時の在留資格に含まれる。密入国のように最初から不法入国するケースは多くはないのだという。
これまでの外国人政策は「受け入れ推進」と「環境整備」の両輪が重視されていた。「いかに外国人材を受け入れ、活用するか」という問題意識が働いていたためだ。
これに対し、骨太方針では、「国民の安心・安全」が強く意識されたため、「制度・ルールを守る」ことが前面に出る内容となった。
▽ハード面の規制
骨太方針では、制度、人員配置など「ハード面」の規制強化に取り組むとしている。
JESTAの導入など入管でもDXを進め、審査の迅速化と高度化を進める。外国人の受け入れの基本的なあり方についての「基本方針」を2026年度中にまとめる方針だ。
入管職員を200人増員することもハード面強化の一環である。在留許可手数料やJESTAの手数料収入で確保した財源も有効活用する。
安全保障の観点から土地利用の調査、ルール整備も進める。実態のない法人設立・ビザ取得を防ぐため、資本金要件を厳格化(500万から3000万円へ)するなど、経営管理ビザの基準を見直す。
▽ソフト面の課題
森氏は「ハード面の整備は重要です。外国人の不法滞在には反対であり、森興産は不法滞在者を支援しないと表明しています」と強調。他方、「社会規範やルールを守ってもらうには、世間ではあまり認知されていない『社会生活の違い』にも目配りが求められます」と森氏。いわば、ソフト面の対策だ。
森氏は「まず外国人と日本人では慣習上の違いが大きいことを理解すべき」という。
たとえば、外国では、雇用・就労上の「契約」を非常に重視する文化がある。就業規則は日本よりも詳細に書き込まれていることが多い。「外国ではジョブディスクリプション(職務記述書)が徹底されているためです」と森氏は指摘する。
「日本のように『なんとなく』や『空気を察する』は通じにくい。始業が午前9時であれば、9時ちょうどに出社する。8時50分に出社して、準備が必要であれば、『9時までの時間外手当』を要求するということになってもおかしくありません」(森氏)という。
▽交通違反「青切符」という落とし穴
仕事だけではない。ゴミ出しや分別などの生活習慣の違いをどう埋めていくかも見逃せない課題だ。
たとえば、ベトナム人には知人の家に集まってカラオケで騒ぐ文化がある。騒音=迷惑という概念が薄いかもしれない。
また、外国人の永住権申請などで特に注意が必要なのが、交通ルールの遵守だ。
交通違反による「青切符」(交通反則告知書)は日本人であれば、「反則金の伴う軽微な違反」と考えがちだ。
だが、外国人の場合は思わぬ「落とし穴」となりかねない。
行政違反履歴が残るため、永住権の申請などが却下されるケースも想定されるのだ。事前の教育、周知の徹底が必要となる。
▽プッシュ型の対策を
今回の骨太方針で示された「ソフト面」の整備は、日本語や制度・ルールの教育の強化だ。
特に「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の創設を目指すという。そのための「プレクラス」などを全国展開するほか、地域や学校の体制整備の充実を図る。また、民泊の適切な運営を徹底させるという。
森氏は「恐らく予算を割り当て、地方自治体を通じて取り組みの強化、浸透を進めると思います」と予測する。
ただ、課題となるのは「受け身」の取り組みだ。
自治体に専用サイト、相談窓口を設けるだけでは十分とはいえない。外国人に届き、生活習慣の違いに気づかせ、改めさせる必要があるからだ。
森氏は「外国人が気づくまで『待つ』のではなく、外国人が頻繁に利用するポータルサイトを活用した『プッシュ型』の対策が必要です」と語る。
本サイトでも以前取り上げたように、森興産の運営する外国人情報共有サイト「WA.SA.Bi.(ワサビ)」は、利用者が居住自治体の外国人向けサイトにワンクリックでアクセスできる機能を搭載している。外国人に知ってもらい、利用してもらう実効的な仕組みをどこまで整備できるかが、外国人対策の成否を分かつ鍵となるのではないか。