◎外国人材活用で働き方「開国」=森興産森社長に聞く⑩

人手不足は、あらゆる業種で深刻さを増している。

 人手不足でも生産性向上を目指すならば、働き方改革は避けられない経営課題だ。ただ意外なことに、外国人材を採用したからこそ、経営者がこれまで意識しなかった「日本独特の働き方をどう見直していくか」という新たな視点を持つこともできる。

 特に日本人の若者の就労が難しくなっている農業、漁業などの第一次産業、介護業などで、外国人材就労の実態に詳しい森興産・森隼人社長に、なぜ「働き方『開国』」が必要なのかを聞いてみた。

◎外国人材活用で働き方「開国」=森興産森社長に聞く⑩

 人手不足は、あらゆる業種で深刻さを増している。

 人手不足でも生産性向上を目指すならば、働き方改革は避けられない経営課題だ。ただ意外なことに、外国人材を採用したからこそ、経営者がこれまで意識しなかった「日本独特の働き方をどう見直していくか」という新たな視点を持つこともできる。

 特に日本人の若者の就労が難しくなっている農業、漁業などの第一次産業、介護業などで、外国人材就労の実態に詳しい森興産・森隼人社長に、なぜ「働き方『開国』」が必要なのかを聞いてみた。

▽農業に外国人材を派遣

 いわゆる一次産業の農業、漁業は、「季節性」のある仕事だ。

 農業であれば秋の収穫が終わり、冬になれば仕事がなくなる。日本では都会への「出稼ぎ」は古くから当たり前の労働慣行であった。漁も時期と海域によって魚種が変わる。

 農業、漁業の人手は恒常的に不足しているが、あくまで需要は「スポット」である。ところが、スポットで働くことを望まない外国人材も少なくない。雇い手と働き手のマッチングは、そう簡単ではない。

 このような背景から、現場職の人手不足に対応する在留資格として2019年から導入された特定技能制度においても農業、漁業に限っては外国人材に「派遣」という働き方が認められている。

 森興産は農業に特化した国内の派遣業者と提携し、インドネシア人の選定、就労後のアフターケアなどを手がけている。

 季節ごとに地域を移動しながら、働いていく農業へ、既に250人近い外国人材を送り出している。

▽「看護」から探し出す介護人材

 本コラムでも紹介したが、介護業界における外国人材はインドネシア人が群を抜いて多い。

 2045年にインドネシアは、人口3億人のうち6000万人が「高齢者」(インドネシアにおける定義)となる見通しだ。このため、インドネシアは国家戦略として介護人材を「高齢化先進国日本」に送り込むことで、人材育成、スキルの習得を急いでいる。

 ある不動産大手は、高齢者が近隣に居住しているエリアの不動産オーナーなどに対し、たとえば1、2階を介護施設、3階を住居とするような収益物件の提案をしている。

 利用者はいても、問題は介護スタッフの確保だ。そこで森興産と組んで、インドネシアからの人材獲得に取り組んでいる。

 森社長によれば「インドネシアでは、『介護』という領域がなく、『看護』の一環として捉えられている」という。

 森興産は2023年、インドネシアの人材育成・紹介大手、Binamanグループと提携を結んだ。Binamanグループは、インドネシア国内外の雇用市場に向けた人材の育成に特化し、日本を含む世界各国への専門職や特定技能人材を送り出している。

 中東には既に10万人を送り出した実績がある。東アジアも重要な市場として位置付けており、日本のパートナーとして森興産を選んだわけだ。

 森興産は、インドネシア大使館、総領事館との交流を通じて、Binamanグループとつながった。外国人材の受け入れにおいて、双方、信頼できるパートナーかどうかを見極めることは極めて重要となる。

 介護人材は、看護学校で学んだ人材にアプローチしている。インドネシア人の候補者に対して日本の勤務地や労働条件、冬や夏の生活環境などを伝えた上で、オンライン面接も交えて、日本の介護施設側のニーズとすり合わせている。

 問われるのは介護の技術だけではない。来日するまでに、最低限の日本語教育と文化、マナーを学ぶ研修も欠かせない。当然、時間も要する。2025年から人材の迎え入れが本格化し、約50人の介護人材が各地で働いている。

▽できる仕事は限られる「ジョブ型」

 外国人材のマッチングでは、「この子がいい」と日本企業側が指名する場合もあるという。

 ただ、森社長は「日本人の採用と同じように考えてはいけないポイントがある」と警鐘を鳴らす。企業向けセミナーでも森社長が注意喚起する点だ。

 外国人材には「できる仕事が限られている」からだ。在留資格で決められた仕事しかできない。違反すれば、不法就労の罪に問われる。雇用者も罰せられる恐れがある。

 つまり、法令上、職務内容、責任、勤務地を定義し、仕事に人材を割り当てる「ジョブ型雇用」なのだ。

 このため、日本人のメンバーシップ雇用と同じように、才能に応じて複数の業務をさせたり、配置換えすることはできないのだ。

 働き方で海外と日本にギャップがある。外国人材を活用するということは、日本人も含めてジョブ型の働き方に見直すかどうかを考えるきっかけとすべきかもしれない。森興産が外国人材の活用について「働き方『開国』」と提唱しているのは、このためだ。

▽企業価値担保権でもチェックを

 現地から直接招く外国人材は技能実習(2027年からは育成就労)や特定技能といった在留資格で現場の仕事を任されることが多い。一方で、日本で学ぶ外国人留学生は「高度外国人材」として専門知識や技術を活用した仕事をしたり、また、現場の外国人材を取りまとめ、管理・支援する「サブマネージャー」としての役割を果たすことが期待されている。

 2026年5月25日から始まった企業価値担保権付き融資では、過去実績ではなく、事業性、企業価値を見定めることが不可欠となる。

 この点、外国人材を活用せざるをえない企業においては、事業性を評価するポイントの一つとして、外国人材を効果的に雇用しているかどうかも重要となるはずだ。

 せっかくの事業性、企業価値があっても収益に転換する経営がなくては、ビジネスにはならない。外国人材もキーパーソーンとして着目される中では、こうした外国人材が活躍できる環境づくりや定着できる支援の仕組みとして、この裏側に信頼できる紹介、育成、サポート企業がいるのかどうかも金融機関はモニタリングすべきである。

著者について

編集長:橋本卓典

1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。2009年から2年間、広島支局にも勤務。2020年編集委員。2025年8月から経済ジャーナリストとして独立。2016年5月に「捨てられる銀行」(講談社現代新書)を上梓、累計35万部のベストセラーになる。NIKKEI FINANCIALにも寄稿。まぐまぐメルマガ「橋本卓典の『現場をゆく』経済・金融ジャーナル」連載中。ラジオNIKKEI「記事にできない金融ウラ話~橋本卓典が語ります」でパーソナリティも務める。地域の変革、生産性向上に向けた活動を支援、協業くださるスポンサーも募集。takunori.hashimoto@sokyudo.com

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1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。2009年から2年間、広島支局にも勤務。2020年編集委員。2025年8月から経済ジャーナリストとして独立。2016年5月に「捨てられる銀行」(講談社現代新書)を上梓、累計35万部のベストセラーになる。NIKKEI FINANCIALにも寄稿。まぐまぐメルマガ「橋本卓典の『現場をゆく』経済・金融ジャーナル」連載中。ラジオNIKKEI「記事にできない金融ウラ話~橋本卓典が語ります」でパーソナリティも務める。地域の変革、生産性向上に向けた活動を支援、協業くださるスポンサーも募集。takunori.hashimoto@sokyudo.com

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