業績改善を阻む「思い込み」~正しい課題を解いているか~
企業の業績改善の第一歩は、正しい現状認識です。
経営者の「思い込み」を打破し、一次情報に基づいた客観的な分析を行うことで、
正しい課題を見つけ出し、効果的な改善策を実行することができます。
「業績が思うように改善しない。」「色々試してみるが、目に見える成果が得られない」。
こうしたお悩みをお持ちであれば、「自分が知らない何か良い解決策」を探す前に、自社の「強み」や「課題」は何かを改めて見つめなおす所から始めてはいかがでしょうか。
- 2025年10月22日
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業績改善を阻む「思い込み」~正しい課題を解いているか~
1. 業績改善を阻むもの
BACソリューションズは、売上高5~100億前後の中小企業を対象に、
目に見える業績改善を達成するための、「本質的」な経営改善のサポートを行っている
コンサルティングファームです。
コンサルティング会社が行う経営支援というと、何か特別な手法を持っていると
思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私たちは「AならばB」「これをすれば業績が良くなる」という、解決手法を提供している分けではありません。
私たちの取り組みは、お客様が「正しい現状認識・正しい意思決定・正しい行動」をする事をサポートする事にあります。
中小に限らず、すべての企業は、多かれ少なかれ、経営上の課題を抱えています。
課題を解決するという事は、シンプル3つのステップで表現できます。
1. ありたい姿の設定
2. 現状把握
3. そのギャップを埋めるための意思決定と行動の促進
外部の専門家のサポートと言うと、多くの経営者の方は、
ギャップを埋めるための「ノウハウ」を期待しがちです。
一方、実務に携わっている立場から申し上げると、業績不振が続いている企業の多くは、➀:ありたい姿の設定と、➁現状認識にズレが生じていることが多いと感じています。
ありたい姿と現状把握がズレてしまうと、当然解決すべき課題自体が変わってしまいます。
業績改善に取り組んでいるものの、思ったような成果が得られていない企業は、課題解決のやり方が間違っているのではなく、解決すべき課題自体が間違っているのです。
なぜ、このような課題が生じてしまうのでしょうか?
今回は特に②現状把握にズレが生じる理由と改善策について、
原因・対策・事例をご紹介します。
2. 現状認識を歪める「思い込み」
現状認識がずれる大きな原因の1つが、経営者の「思い込み」です。
組織には、その企業や経営者の成功体験・失敗体験の積み重ねで構築された、
暗黙の前提や、独自の合理性が存在します。
この暗黙の前提や、共通認識があるからこそ、組織は円滑に回っている側面があります。
独自の合理性は、かつての成功パターンの集積知でもあります。
このため一概に否定されるものではありません。
しかし、外部環境や市場の変化が激しいため、前提条件が大きく変わる時代においては、逆に業績を妨げる結果につながりかねません。
「暗黙」の前提だったため、組織の内部の人達は変化に気づく事が遅れてしまいます。
「独自」の合理性のため、社会が変化する場合、ギャップが大きくなります。
重要なのは、客観的な視点から、「思い込み」を打ち破り、自社の姿を捉えなおす事にあります。
3. 思い込みを打破する「一次情報」
この根深い「思い込み」に気づき、打ち破るには、
「一次情報=事実」の活用が非常に有効です。
具体的には、以下の2つの方法で、利益に影響する会社固有の事象を具体的に捉えることが鍵となります。
お客様の声を聴く
お客様に選んでいただけているには、それなりの理由があります。
ですが、会社側が考える理由と、お客様が選んでいる理由がずれている事は
少なくありません。
お客様が認識している、会社の真の良さ(強み)や改善要望を把握することが、
収益力改善のヒントになります。
これはto Cだけではなく、to Bでも効果があります。
むしろ、to Bで、特定の取引先と長く取引を行っている会社の方が、「思い込み」が
強くなりがちです。
お客様に話を伺ってみると、会社側が「自社の強み」と考え、時価と労力をかけて
行っているサービスや工程が、お客様から見ると、購買判断にあまり影響がない項目だという事も珍しくありません。
逆にお客さまからすると、解決して欲しい課題や、提案して欲しい事は別にあるのに、
見落とされている事もしばしばです。
採算把握(商品別・製品別)
定性的に自社の強みを掴むのが、お客様の声だとしたら、定量的に自社の得意・不得意領域を把握するのが採算把握です。
業績不振の企業では、商品・製品別や、取引先毎に、どこでどの程度利益が出ているのかについて、認識がズレている事が往々にして存在しています。
数値別・取引先別の売上高数値は抑えているが、利益率は見ていないケース。
部門別、商品別の採算は作成しているが、単純に人数や売上高等の比率に応じて売上原価を配分しているため、実態と利益率がずれているケースもあります。
一見、売上高が大きく、利益率が高いように見える商品・取引先でも、取引にかかっている手間や工数を加味して算出しなおすと、実は主力と捉えていた商品・取引先が不採算で、重用視していなかった商品・取引先が収益を支えていた事が見えて来る事があります。
ある企業では、業績不振の原因が、主力だと思っていたある部門の売上を増やすために、社内の資源を集中させようとしていた事だった事があります。
儲からない部門に限られた資源を投入しようしていたのですから、逆に苦しくなるのは当たり前です。
このように、1次情報から自社を捉えなおすと、自社の「強み」や「課題」は違ったものが見えてきます。
4. 改善事例
実際に課題を捉えなおす事で、大幅な業績改善を図る事に成功した企業の事例を見ていきましょう。
A社はある地方で一般消費者向けの製造小売業を行っていました。
業歴は古く、その地域では老舗企業として名前を知られている企業でした。
当初のA社の認識は、
【お客様に選ばれる理由】
・自社の強みは豊富な商品ラインナップと、手軽に購入できる事
・主な購入層は主婦層
・不採算商品もあるが、それが集客につながっている
【業績不振に陥った理由】
(1)コロナ禍を契機とする生活様式の変化
(2)営業エリアの人口減少
(3)大手チェーン店の出展に伴う競合激化
というものでした。
実際にお客様インタビューと採算把握を進めると、当社側の認識と異なる事実が見えてきました。
お客様が当社に期待していたのは、「質の高い贈答品」でした。お祝い事等、特別な時に、特別な相手にプレゼントして恥ずかしくない商品として認知をされていたのです。
そのため、購入層していたのは、主婦層だけではなく、サラリーマン層や法人等も含まれていました。
商品別の採算を細かく見て行くと、売上高を支えているのも、利益率が高いのも高価格帯の商品でした。一方、大手チェーン店に対抗するために投入した低価格帯の商品は、需要が少なく、当社が考えていたような、集客に繋がっているとは言い難く、採算も悪い事が見えてきました。
A社の業績不振は、大手チェーン店を意識する余り、元々競合する領域が少ないにも関わらず、自社の強みが活かせない、競合の土俵で戦おうとしていた事にありました。
強みと顧客ニーズを元に、商品の絞り込みと消費者への訴求方法を見直したA社はその後急速に業績を回復する事に成功しています。
5. まとめ
企業の業績改善の第一歩は、正しい現状認識です。
経営者の「思い込み」を打破し、一次情報に基づいた客観的な分析を行うことで、
正しい課題を見つけ出し、効果的な改善策を実行することができます。
「業績が思うように改善しない。」「色々試してみるが、目に見える成果が得られない」
こうしたお悩みをお持ちであれば、「自分が知らない何か良い解決策」を探す前に、自社の「強み」や「課題」は何かを改めて見つめなおす所から始めてはいかがでしょうか。
以上