◎保証付き融資に「予兆管理」の新制度導入=AI活用のBPOも視野
国は2026年3月、保証付き融資の予兆管理を行う「モニタリング強化型特別保証制度」を3年間(2029年3月末まで)の時限措置として開始した。
予兆管理とは何か。なぜ今、必要なのか、今後の中小企業金融にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを本コラムで解説する。
- 2026年3月18日
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◎保証付き融資に「予兆管理」の新制度導入=AI活用のBPOも視野
国は2026年3月、保証付き融資の予兆管理を行う「モニタリング強化型特別保証制度」を3年間(2029年3月末まで)の時限措置として開始した。
予兆管理とは何か。なぜ今、必要なのか、今後の中小企業金融にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを本コラムで解説する。
▽予兆管理とは
「予兆管理」が注目される背景には、中小企業の生産性向上において「事業の採算可視化」が課題となっていたことがある。2025年6月公表の「骨太の方針」に「ITを活用した予兆管理を目指す」との文言が盛り込まれたことで、本格的な検討が始まった。
26年3月からスタートしたのは、信用保証協会の保証付き融資を対象として、月次で財務や資金繰りの状況などを把握し、金融機関・保証協会に経営状況を報告する制度だ。当面(27年3月申込分まで)は、信用保証料の半分が国から補助される。 認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)との連携を前提としており、月次巡回監査を実施しているTKCなどが事業に参画する。
▽採算可視化なき中小企業経営
中小企業の生産性向上、価格転嫁、賃上げに立ちはだかる要因の一つは、採算を把握せずに事業を続けているところにある。
中小企業庁の採算可視化調査でも、中小企業において管理会計、特に限界利益に関する理解が低いことが明らかとなっている。
事業実績、ノウハウを習得するために敢えて赤字仕事を請け負うのであれば理解できるが、原価割れであることを知らずに値上げもせずに製品、サービス提供を続けることは、実質的には「買い手にお金を支払って、製品を引き取ってもらっている」という行為に等しい。
「取引先に申し訳ない」と値上げに慎重になる経営者は多いが、採算割れの仕事を続けることの意味を家族や従業員の前で胸を張って説明できるだろうか。
▽企業価値担保権の「セカンドオピニオン」にも
予兆管理事業は、2026年5月から始まる企業価値担保権のモニタリングにも参考情報として活用できるのではないだろうか。
現時点で、企業価値担保権における「保証付き融資」の意義や役割は定まっていないように感じる。信用保証料を保証協会に支払う「キャッシュアウト」を金融機関がどう考えるかは判断が分かれるかもしれないからだ。
ただ、予兆管理事業であれば、単なる「保証」という意味合いを超えて、企業価値担保権による事業性融資の見通しを判断する上で「セカンドオピニオン」として役に立つ。支払う信用保証料に「保証」を超えた付加価値があるはずだ。
▽AI活用のBPOにも道筋か
予兆管理事業は、3年の時限措置で終わるとは考えにくい。改良を重ねてデジタル化の流れに進むと考えるのが自然だ。となれば、将来のAI活用によるBPO(Business Process Outsourcing)にも道筋をつけるものとなるのではないか。
中小企業1社1社が、経理担当を雇いながら経理部を維持していくのは人手不足時代において難しくなる。同時に金融機関の職員が決算書を受け取りに走り回る「昭和スタイル」も、そろそろ考え直した方がいい。
地域金融機関がBPO事業を手がけて、中小企業の経理事務を代行していくのが、中小企業金融のDX化として進むべき道ではないか。
企業は人手不足に対応するため、間接部門から営業・生産などの直接部門に人員を手当てしていくのが趨勢である。中小企業も例外ではない。 金融機関も審査の精度を上げつつ、付加価値ある課題解決型の営業に人員をシフトしていくためにもBPOの導入を検討すべきだろう